• 体験レポート
  • ライフ&カルチャー
  • 州誕生50周年記念
  • インタビュー

食とエンターテイメント「ワイキキ・スパム・ジャム」

~ハワイの人気食材スパムとエンターテイメントを楽しむ~
 

0520_top1.jpg 今年で7回目を迎える「ワイキキ・スパム・ジャム」。スパムはハム缶のことで、それを切って焼き、日本のおにぎりのようにして手軽に食べられる"スパむすび"は、ハワイではお馴染みの一品だ。「ワイキキ・スパム・ジャム」は、人気食材のスパムとジャム――いわゆるジャズミュージシャンの間で行なわれる「ジャム・セッション」をもじってはじまったといわれ、スパムを使ったオリジナルメニューと、ハワイアンミュージックのエンターテイメントが体験できる楽しいイベントとして地元でも人気が高い。ワイキキの目抜き通りのカラカウア大通りが舞台なので、観光客でも気軽に参加できる点も魅力といえる。毎年4月の最終土曜日に開催されるので、ゴールデンウィークの旅行者にぜひ、参加してもらいたいイベントだ。

  
人気店のスパム・メニューを食べ歩き

0520_1.jpg  カラカウア大通りの一画を歩行者天国にして開催される「ワイキキ・スパム・ジャム」。イベントのスタートは夕方4時だが、午後2時から通行止めになっているせいか、当日はカラカウア大通りに入る少し前から渋滞がはじまった。歩行者天国となるのは、ロイヤルハワイアン・アベニューからカイウラニ・アベニューの間の500メートル強の距離で、まさにワイキキの中心といった場所。道の両側には特設ステージやブースが並ぶ。昨年は2万人を超える参加があったといわれ、ロコにもかなり浸透しているイベントのひとつだ。各ブースでは、ハワイの人気レストラン12店がそれぞれに工夫をこらしたユニークなスパム料理を販売しており、どのブースも人だかりが絶えない。

 なかでも人気が高かったブースは、ロイヤル・ハワイアン・センター内やワード地区にレストランを展開しているPFチャンズ。スパムを味付けしてレタスで巻いたヘルシー感覚な料理を披露していた。そして、ジミー・バフェットのスパム・チリ・ドッグ。これは同イベントのために作られた新メニューで、ロコにも人気のチリを使った料理とあって長い列ができていた。このジミー・バフェットはハワイを愛し、毎年ワイキキ・シェルでコンサートをしているシンガー・ソングライターのジミー・バフェット氏のレストランで、最近「オハナ・ワイキキ・ビーチコマー」にオープンしたことでも注目されている。

 このほか、お好み焼きの店「千房」や「道楽寿司」も参加し、スパむすび、チャーハン、焼きそば、スパムカツ、ホットドッグやナチョスなど、散策がてら気軽に食べられる一品を用意していた。夕方6時を回ると各ブースの周囲にはかなりの行列ができ、人気のブースともなると料理の出来あがりが間にあわない勢いで次から次へと売れていった。

0520_2.jpg

特設ステージではライブショーも上演

0520_3.jpg  日が傾くと、さらに来場者が増え、かなりの人混みとなった。とはいえ夕方の心地よい風が吹くおかげで、暑さはあまり感じずにすむ。周囲は英語、韓国語、日本語などが飛び交いまるでお祭り騒ぎといった感じだ。家族や友人たちと思い思いのスパムのディナーを食べながら、ライブ演奏から伝え聞こえる音楽をBGMに歓談している人、スパムTシャツを買って、早速それを着て練り歩いている観光客など、この周辺の熱気は相当なもの。

 そんな人々の合間を縫って特設ステージへ向かう。「オハナ・ワイキキ・ビーチコマー」前のステージでは伝統的なハワイアンミュージックが演奏され、作曲家でありエンターテイナー、ウクレレ指導者として知られるハーブ・オオタ・ジュニア氏のウクレレ弾き語りが日暮れ時からはじまった。オオタ氏は、ナ・ホク・ハノハノ・アワードに6回ノミネートされ、ハワイミュージック・アワードを2回受賞するなど、日本、アメリカ本土でも演奏をする著名ミュージシャンだ。

 すっかりあたりが暗くなると、ステージのとりとしてウクレレの名プレイヤーのケリー・デ・リマ氏が率いるカペナの演奏がスタートした。このバンドはミクロネシアでも大人気だという。観客はみんな、ゆったりした音楽に酔いしれていた。もうひとつの特設ステージでは、コンテンポラリー・ハワイアンミュージックを中心にライブ演奏がされ、2005年にスラック・キー・ギター Vol.2でグラミー賞を受賞したハワイ出身のジョン・クルーズ氏も出演。実は彼は、オバマ大統領が初めてハワイで選挙キャンペーンを展開した際にボランティアで歌を披露。それがきっかけで、オバマ大統領の就任式典にも参加している。こんな一流ミュージシャンのライブを無料で聴けるのも、このワイキキ・スパム・ジャムの魅力であろう。

0520_4.jpg

ロコも観光客も楽しめるイベントを

0520_5.jpg  ローカルも観光客も楽しめるイベントとしてすっかり定着した感のあるワイキキ・スパム・ジャム。イベントを主催するNPO団体である「SJ Foundation」代表のバーバラ・キャンベル氏は、開催の経緯について「ここ最近、観光客からはもっとローカルが参加するイベントに行きたいという声をよく聞いている。また私自身、ロコにもっとワイキキに来てもらいたいという願いもあった。そこでロコも観光客も参加できるイベントを作りたいと考えたのが、このワイキキ・スパム・ジャムの発端」と説明する。

 また、イベントのもう一つの目的となっているのが、ハワイ・フード・バンクへの寄付金集め。ハワイ・フード・バンクとは、低所得者や貧しい子供たちへ食べ物を配給する団体で、一番人気のリクエストはスパムなのだという。イベント会場でも、当日集まってくる人たちが、現金や缶類などの寄付ができるようブースを設置していた。

 今年の参加者は去年よりも10%増え、寄付金も10%増と成功に終わったという。キャンベル氏は「参加者の6割近くが観光客で、4割がロコ。思い通りにうまくミックスした良いイベントとして、今回も無事に終えることができた」と、満足そうであった。

 
 

ハワイとスパム

0520_6.jpg  ハワイ州の一人当たりのスパム消費高は全米一高く、毎年約700万缶ものスパムが食べられているそうだ。そもそもスパムは軍の食糧として使われていたという。これはスパムが比較的安価で賞味期限も長いためで、第2次世界大戦から朝鮮戦争、ベトナム戦争の時代、米国軍で標準的に食糧として利用されたことによって市民に浸透したというのはよく聞く話だ。

 ハワイでは、子供のランチにスパむすびを持っていかせるほか、マクドナルドや他のファーストフード店でもスパむすびが出てくるほどで、ハワイの人々の間で愛されている食べ物のひとつ。もちろんロコがよく食べるプレートランチや"ベントー"の中にも、お約束のようにスパムの一切れが入っている。

 スパムの製造元であるホーメルフーズもワイキキ・スパム・ジャムを協賛しており、ロゴ入りTシャツやボール、キャップなどをブースで販売。その売り上げ金の一部は、ハワイフード・バンクに寄付するという。


 

今週のハワイ50選
ワイキキ(オアフ島)
ハワイアンミュージック(全島)
ハワイアンフード(全島)

 

取材:堀内章子