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歴史あるフラ・イベント「プリンス・ロット」の楽しみ方

屋外で気軽に楽しむフラの祭典「プリンス・ロット」
~モアナルア・ガーデンでハワイの伝統文化と触れあうひとときを~

0806_01.jpg年間を通してハワイ各地で行なわれるさまざまなフラ・イベントのなかでも、観光客にも人気が高く、親しみやすいのが「プリンス・ロット・フラ・フェスティバル」。最古のフラ・イベントで、地元の人々にも愛される催しだ。会場は「この~木、何の木、気になる木~」の日立のTVCFで有名な木があるモアナルア・ガーデンで、毎年7月の第3土曜日に開催される。競技(コンペ)形式で順位を競うイベントではなく、観客は野外で芝生の上に敷物を引いてピクニック気分でフラを見るといった趣向なので、フラに関心がある人はもちろん、ハワイの爽やかな風を感じながら野外でのんびり過ごしたいカップルや家族連れまで、幅広い客層にすすめられるイベントだ。
 

ボランティアで運営される無料のフラ祭典

0806_024.jpg 今年で第32回を迎えた「プリンス・ロット・フラ・フェスティバル」が開催された7月18日は、クィーン・リリオカラニ・ケイキ・フラ・コンペティションや、ハワイのグラミー賞といわれるナ・ホクハノハノアワードで5部門の賞を受賞したロパカ・カナカオレ師のワークショップなど、各地でフラ関連のイベントが開催され、フラ好きには多忙な日となった。そんななか足を運んだ「プリンス・ロット・フラ・フェスティバル」は、おしゃれに着飾った人や熟年夫婦、子供連れのファミリーが集まり老若男女で大にぎわい。JALフラ・ウィークの会期中でもあったことから、日本人観光客の姿も多かった。

 同イベントの主宰者は、非営利団体であるMGF(モアナルア・ガーデンズ・ファンデーション)。すべてボランティアで成り立っており、入場は無料だ。1863年から9年間の在位であった、最後のカメハメハ王朝の王、カメハメハ5世のプリンス・ロットは、このモアナルア・ガーデンでフラを楽しみ、ルアウ(宴会)を催していたことで知られ、園内にはプリンス・ロットの別荘も残されている。MGFはこのガーデンを管理する団体で、同イベントはプリンス・ロットを称え、次世代の子供たちにハワイ文化を継承することを目的に主催している。

 当日は朝9時からスタート。オープニングセレモニーに引き続き、ビッキー高峰先生のカヒコ、有名なフラのハラウ(教室)9組のカヒコとアウアナのパフォーマンスが行なわれ、最後はアンクル・エディ・カマエの音楽にあわせて踊りたい観客が自由参加するなど、大いに盛り上がった。今年の天気は曇り時々にわか雨、時々晴れ。野外イベントはどうしても天気に左右されてしまうが、毎年、このイベントは恵まれている。


各ブースで"メイド・イン・ハワイ"を体験

0806_03.jpg  プリンス・ロットの見どころはフラ以外にもうひとつある。それはハワイの伝統文化を伝えるブースの数々だ。ニイハウ島のニイハウシェル(貝)やレイ・メイキング、そしてポイ・パウンディング(タロイモを使った古来ハワイアンスタイルの餅つきみたいなもの)の体験など、"メイド・イン・ハワイ"が盛りだくさんに用意されているので、気軽に伝統文化に触れることができる。

 その中でひときわ異彩を放っていたのが、ルア(武道)のブース。ルアという護身術がフラにあるのは知っていたが、これは、ハワイのフラの先生もあまり語らない教えで、いわば秘伝のような存在。フラを踊る上で、カホロ・フキ(左手を前に伸ばし、右から左、その反対と交互に回る)というステップが護身術にもなることから、フラの先生は「夜歩いている時、身に危険を感じたら、カホロ・フキを使いなさい」と教えてくれたことがある。

 昨年のプリンス・ロットで、その武道の型を披露していたパー・クイ・ア・ホロ団体のカイビさんによると、「フラを踊る上で、3つのキーワードがある。それは、フラ(踊り)、オレロ(言葉)そして、ルア(武道)。これはあまり知られていないので、ぜひ知ってほしい。ルアの教えの中にロミロミ(マッサージ)やラウラパアウ(薬草学)などもある」とのこと。こちらでフラを習いはじめて12年になる私だが、とても勉強になった。このようにフラについて学べる機会が多いのもこのイベントのよいところで、気軽なカルチャーイベントとしてだけでなく、フラ・スペシャリストにとっても知識を深める場となっている。


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フラを通してハワイの伝統文化を知る


0806_052.jpg 日本でもフラは非常に人気があり、フラ教室、スポーツクラブやコミュニュティーセンターなどでのフラ人口が約40万とも60万人ともいわれるほど親しまれている。しかし、フラの文化が正しく広まっているとは限らず、例えばハワイで観光客向けに行なわれているポリネシアンショーの火踊りはサモアの文化で、ココナッツブラはタヒチの文化なのだが、ハワイの文化と混同している旅行者も少なくない。ちなみに日本では、フラのことをフラダンスとよく表現しているが、フラの意味がダンスなので、直訳するとダンスダンスになってしまう。フラに関する一般的な誤解を解き、独自の文化の存在を伝えることも、ハワイの文化に親しんでもらうための第一歩となる。

 また近年はハワイで伝統文化の見直しの意識が高まっており、今回のプリンス・ロット・フラ・フェステバルでは、あまりワイキキでは見られない古典フラが多く披露されていた。ハワイの歴史では、ハワイにやってきた宣教師のキリスト教の文化を、当時のハワイアンがアロハの心を持って受け入れてきたという流れがある。今回のフェスティバルでは、現代文化と古典文化の双方を尊重する動きが一体化し、バランスのとれたハワイ文化の融合の形を表現してくれたような気がする。

 ここで、フラにある2種類の踊り方、古典フラ「カヒコ」(Kahiko)と現代フラ「アウアナ」(Auana)について、少し説明しておきたい。カヒコは、神に奉納するための踊りや戦いの踊り。文字を持たなかった古代ハワイアンは、踊りに意味を持たせ、魂を込めて表現していた。一方アウアナは、ウクレレやギター、ピアノなどの音楽にあわせて笑顔で踊るスタイルだ。カヒコは古典フラなので正式な踊りを表現しなければならないが、アウアナは現代フラなので好きなように表現できる。とはいえ歌詞を理解して魂を込めて踊ると、その思いが天に通じるためか雨が降ってしまうこともあるほど。実際に私もそういう経験に遭遇したことがたくさんある。こんな違いを知って鑑賞するだけでも、フラの奥深い世界の一端に触れることができ、印象深い旅行の経験となるはずだ。


▽MGF(モアナルア・ガーデンズ・ファンデーション)
http://www.mgf-hawaii.org


 

取材:青木智子