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年始インタビュー、ハワイ州観光局代表 一倉隆氏

「底固めの年」を経て、2010年は訪問者数の回復を展望
情報発信とイメージ訴求で販売サポート強化へ

IMG_6691.jpg   FIT化やサプライヤーの直販化で市場や事業環境が変わるなか、昨年は経済不況に新型インフルエンザが加わり、旅行業界にとっては試練の年となった。先行き不安による旅行の買い控えなど、マーケットの冷え込みは継続し、旅に出るきっかけづくりやリピーターに向けての新たな提案が、依然として求められている。そんな役割を担いつつ、海外旅行需要の牽引役を果たしてきたデスティネーションの代表格がハワイだ。ハワイ州観光局(HTJ)代表の一倉隆氏に、現在の市場動向や今後のマーケティング展開について聞いた。(聞き手:弊誌編集長 松本裕一)


-昨年はどのような1年だったと考えていますか

一倉隆氏(以下、敬称略)  2009年は決してよい年とはいえないが、底堅めのできた年だったといいたい。訪ハワイ日本人客数は3月から4月に前年比でプラスに転じ、好調な推移を予想していた矢先、ゴールデンウイークを新型インフルエンザが直撃、6月には前年を30%以上割り込む結果となった。その後9月のシルバーウイークは好調で、10月から12月はプラス推移の見込みで、2009年の総数は6.5%減の110万人ほどと予想している。前年の117万人と比べると6.5%減だが、よくここまで戻ったというのが正直なところだ。

 日本人全体の出国者数は2009年1月から10月の累計で4.2%減だが、韓国への訪問者数が突出していて全体のマイナスを補っている。ハワイの落ち幅は他デスティネーションと比較してさほど大きくはなかったと考えており、マーケットシェアはキープできたといえるだろう。


-2010年のマーケティングプランをお聞かせください

IMG_6696.jpg 一倉 2010年も2009年の方針をさらに進化させた形で継続する。キャンペーンに関しては基本的に方針をあまり変えるべきではないと考えており、成熟したデスティネーションの"売りのポイント"として信念をもってやっていく。

  2009年は「アニバーサリー」をコンセプトに、「人生の中の、ハワイ。」という新たなタグラインを紹介し、「ハワイ50選」を提案した。特に旅行会社とコラボレーションする形が定着し、ハワイ50選では企画段階から旅行会社に意見をいただき、各社がパンフレットのコストを削減する動きがある中で、商品造成を含めて協力いただくことができた。

 さらに2010年からは写真家の高砂淳二氏とのコラボレーションを開始する。カレンダーやホームページなどに高砂氏の写真を使用し、素材は旅行会社やメディアにもパンフレットなどでの使用を可能とするほか、店頭を飾るディスプレイキットにも同氏の写真を使用して提供する。2000店舗分を用意しており、ジェイティービーやPTS、近畿日本ツーリスト、エイチ・アイ・エスなどを中心に店頭をハワイ化する。高砂氏はハワイ愛好家でも一定の認知があり、それとコラボレーションできることに旅行会社からも評価をいただいている。


-旅行会社の販売ルートが多様化する中で、店頭販売にフォーカスされる理由は

一倉 今後5年、10年先をみれば、海外旅行の販売チャネルがドラスチックに変わることは間違いなく、それはハワイ、グアム、韓国あたりからはじまってくるだろう。とはいえ、現状でハワイへの渡航者の8割はパッケージツアー利用で、店頭でパンフレットをピックアップする人が多いことも事実だ。そこで今回は、店頭は最後のコンタクトポイントであるとして、店頭を活用することに重点を置いた。


-2010年はどういう1年になると思いますか

一倉  2009年秋からの動向をみていると、訪問客数は徐々に戻ってくると考えている。一方で観光局はどのデスティネーションも予算面で厳しいものがある。前年の税収を受けての予算組みとなり、ドルベースでカットとなる上に現在の為替水準にも左右される。市場については堅調だと思うが、ハワイという成熟したデスティネーションでは、常に新しい情報を出していかなければならないという点で努力していく必要がある。


-予算が厳しい中で注力していく点は何ですか。特に旅行会社に対しては

img4b4c5cb621b4c.jpg 一倉 予算が減る中でもフォーカスしたいのは、対消費者でいえばピーアール活動だ。2009年は露出頻度だけでなく質的にもよい展開ができた。メディア露出が増えると反響も大きく、観光局が努力すれば取り上げてもらえるだけの話題性がハワイにはまだまだ多いと思っている。

 同時に旅行会社に対する情報発信では、売っていただくための素材をつくる工夫が欠かせない。ハワイ50選もそのひとつで、この発想のベースにあるのが日本人の海外旅行のきっかけになるテーマ「世界遺産」だ。HTJ側の提案をハワイ州としても考慮し、「ステート・ヘリテージ」の整備を進めており、年内、もしくは2011年には、20数ヶ所の発表ができる見通しだ。また、フラ関連のイベントのほか2010年には初めて音楽関連の大型イベント「ナ・ホク・オ・ハワイ・ミュージックフェスティバル」も開催される。HTJでは商品造成に向けて、旅行会社にアピールしていきたい。


-FITの増加やオンライン旅行会社の台頭など、業態が多様化するなかで、観光局に求められる役割をどのように考えていますか

一倉 観光局の役割はデスティネーションのブランディングと渡航者数の維持、増加という点では変わらない。ただ今の時代はそこにとどまっているだけではなく、実際の販売に結びつくサポートが求められているのも確かだ。同時に各社は投資に見あった収益を求められているのも事実で、ここ2年ほどそうした点で話しあいをしている。

 2009年の数値では、タイムシェアやコンドミニアムなどの利用者が増えている。ホノルルマラソンもFITのリピーターで直接手配をする人が多勢だと思われる。今年実施する店頭へのサポートと矛盾するようだが、FIT化の流れも事実で、HTJでも2009年からSNSやブロガーを通じて直接消費者にアプローチする展開にも着手している。今後5年くらいの間にHTJのプログラムの中でもメディアミックスの割合は変わってくるだろう。


-渡航者数の増加には航空座席供給量の拡大が欠かせませんが、期待はありますか

IMG_6708.jpg 一倉 デルタ航空(DL)が今年2月から、東京、大阪発便の機材をすべてジャンボ化する予定で、1日あたり200席ほどの増加になり、ありがたい話だ。また、日米のオープンスカイ合意を受け、深夜に羽田発便のホノルル線導入を検討しているという話も聞こえてくる。また、今後マウイなどへのチャーター運航も出てくるだろう。2009年はいろいろな状況があったなかで、ハワイのマーケットは堅いこと、イールドの出るデスティネーションであることを航空会社も再認識したのではないか。徐々に回復し、特に地方からの便を含めてこの2、3年で状況が変わることを期待したい。HTJでは航空座席数が戻っていくなか、中期的に 2015年くらいまでには以前の140万人から150万人のレベルに戻したいと考えており、それだけのポテンシャルは十分にあると思っている。


-個人的にハワイの魅力をどう感じていますか

一倉 よくプレゼンテーションなどでは、特別なタイミングで旅行に出かけられるのなら「幸せになれる島、ハワイ」をおすすめください、と申し上げてきた。ハワイに行くと本当に「幸せになれる」という気がする。ハワイ50選で使用する写真や映像を見ていても、幸せな気分になってくるくらいだ。ポスターなどの写真撮影は昨年まではオアフ島でのものがほとんどだったが、今年は多様性という意味も含めて、オアフ島のワイキキ、カウアイ島のハナレイ湾、マウイ島のラハイナ、世界遺産にもなっているビッグアイランドの火山国立公園の4つをフィーチャーしており、ハワイが単なるビーチリゾートというだけではない、もっと上質な雰囲気を伝えられるのではないかと思っている。2010年はこうした展開を通じて、「幸せになれる島、ハワイ」のイメージを旅行会社やメディア、さらには一般の方にも理解いただける年にしたいと思っている。


ありがとうございました