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ローカルバスで巡るマウイ島の旅

現地の“公共の足”で新たな旅行スタイルを提案
~ローカルバスで巡るマウイ島ノースショアのヘルシー・ライフ発信地~

100121_01.jpg  「どうやって移動するか」は旅先では重要なポイント。特に公共の足がほとんどないハワイの隣島ではレンタカーを借りない場合、一部ホテルなどのシャトルバスやタクシーを利用するか、ツアーに参加するなど、移動手段の選択肢は限られていると思われがち。そこで今回は観光客にも使い勝手のよい、マウイ島の公共の足として活躍する路線バス「マウイ・バス」を使ったノースショアの町への旅を例に、レンタカー利用とは違うスタイルで旅を豊かにできる、ローカルバスならではの周遊の楽しみを紹介する。リピーターやセルフドライブに自信のないFIT希望者に提案したい。


生活に欠かせないマウイ・バス、運賃は最大1米ドル

100121_02.jpg  マウイ島に初めて路線バスが導入されたのは2002年のこと。バス会社と非営利団体のマウイ・エコノミック・オポチュニティの共同事業として開始されたが、数年前にマウイ郡が正式に公共事業として参画。名称も「マウイ・バス」に改めて以来、車両は新しくなり、白い車体に鮮やかなブルーとグリーンの花のマークに統一された。運行スケジュールも30分から1時間刻みで管理される路線が多く、今や地元の住民の通勤や通学に使われる公共の足として欠かすことのできない存在になっている。

 路線数は全部で10。島の中心地域であるカフルイとマウイ郡庁のあるワイルクを拠点とし、西はマアラエア、ラハイナカアナパリ、カパルアまで、南はキヘイ、ワイレア、北はパイア、ハイク、東にプカラニ、マカワオなど、マウイ島の主だったエリアを網羅している。運賃は5路線がなんと無料。それ以外は距離に関係なく1米ドルに統一されている。

 また、マウイ・バスのコミューター・サービスがあり、4つの長距離路線が運行されている。こちらは前日午後3時までの予約が必要になるが、運賃はやはり1 米ドル。通常の12路線を乗り継ぐことなく長距離を移動することが可能だ。マウイ・バスは祝祭日にかかわりなく年中無休で、マウイ島の自然のなかを走り抜けている。観光客にとっても、わずか1米ドルで移動できるこのマウイ・バスを見逃す手はないといえるだろう。


ローカルバスならではの旅の魅力

100121_03.jpg  レンタカーを運転しないで島内を周遊できるメリットといえば、マウイ島の風景をじっくり堪能できること。特に、マウイ島観光のハイ・シーズンである12月から4月上旬までは、この時期ならではの見どころがいっぱいだ。カアナパリラハイナからマアラエア、キヘイ、ワイレアまでの南西側の海沿いの道路からは、繁殖と出産のためにアラスカから南下してきたザトウ・クジラを見ることができる。

 また、この時期、北太平洋でおこる暴風の影響でできた波がハワイの島々にやってくるため、その波を一番はじめに受け、地形にも恵まれたノースショアのパイア、ハイクに向かう北東側の海沿いでは、通常の時期よりも波が高くなる。その波をねらって、世界中からサーフィンやウインド・サーフィンのプロフェッショナルが訪れ、沿道では、彼らの素晴らしい技と挑戦を眺める人々で賑わう。東に向かうプカラニ、マカワオの路線では、マウイ島のトレード・マークでもある雄大な山ハレアカラと裾野に広がるサトウキビ畑が美しい。

100121_03.jpg  また、ラハイナ、カフルイ、ワイルクを走る市内路線は循環路線なので、ぐるっと町をひとまわりしたり、ショッピング・モールをはしごしての買物にも最適。なかでも地元住民や観光客に人気の高いカフルイのショッピング・モール「クィーン・カアフマヌ・ショッピングセンター」は、路線の中心地点でもあるのでアクセスの利便性は抜群だ。マウイ・バスを利用すれば、ショッピングに興味のない男性陣にレンタカーの運転を頼んだり、集合時間を気にせずにショッピングを楽しむことができるので、小グループや三世代旅行での別行動時にも有効に活用したいところだ。


ナチュラル&ヘルシー・ライフの発信地へ

100121_05.jpg  健康がキーワードになって久しい今日このごろ、旅にも同じキーワードを求める旅行者におすすめなのが、マウイ・バスの北東路線「35 ハイク・アイランダー」を使ってノースショアを訪れる、ナチュラル&ヘルシー・ライフ追求の旅だ。

 ノースショアの町パイアとハイクは、サトウキビやパイナップルによるプランテーション農業が衰退したあと、地元の住民やノースショアの波を愛するサーファーなどを中心に、自然を愛する人々が集まる町へと変貌を遂げている。そのため、自然との共存を大切にする発想から生まれた、ナチュラルな衣食住をテーマにした店舗が軒を連ねている。また、パイアからハイクに向かう途中にあるホオキパ・ビーチは、世界中のサーファーが集まるサーフポイント。波の上を滑り、舞う彼らの動きは、マウイ島で見ることのできる芸術のひとつといえるだろう。

 マウイ・バスの北東路線は、カフルイのクィーン・カアフマヌ・ショッピングセンター、カフルイ空港などから乗車が可能。ハイクとパイアのどちらの町を先に訪れるかは自由だが、ハイクの町でおすすめなのが、「ザ・スタジオ・マウイ」というヘルス・スタジオ。ここでは、初心者から上級者までの各レベルにあわせた、さまざまなスタイルのヨガのクラスが用意されている。いまや日本でも人気となったヨガだけに、滞在ホテルのプログラムだけではなく、ノースショアまで足をのばしてみるのも一興だろう。

 そして、長年ハイクの住民から頼りにされているレストラン「コリーンズ」。朝6時から地元の野菜と果物をたっぷり使った朝食を楽しむことができ、ランチはもちろんのこと、ワインを豊富にそろえた自慢のディナーまで味わうことができる。ハイクの町の食卓的なレストランも忘れることはできない。


ショップ巡りが楽しいパイアの町を散策

100121_06.jpg  身体を動かし、胃袋が満足したら、パイアの町を散策したい。マウイ島を代表するサーフブランド「ホノルア・サーフ」から、サーフィンを中心にした海のスポーツギアがそろう本格的な専門店、思わず手に取ってしまうファッション・アイテムばかりのセレクトショップ、ナチュラル志向満点のヘンプ・ストアまで、小さな町の中心地は見逃せないショップが軒を連ねている。

 買物の途中で一休みしたくなるカフェやレストラン、バーもナチュラル志向が主流。オーガニック素材のみを使用した窯焼きピザが話題のピッツェリア、親子三代に伝わるレシピで人気のジェラート屋もあれば、地元のフィッシャーマンが毎朝釣りたての魚を届けるシーフードレストランなど盛りだくさん。そして忘れてはならないのは、町に根を下ろして25年になる「マナ・フード・ストア」だ。「マナ」とはハワイ語で「精神」を意味する言葉。つまり、心のこもった豊かな精神が宿った商品のみを扱うお店で、生鮮食品や焼きたてパンから、コスメティック、サプリメント、衣類、生活雑貨に至るまで、たいていのものがそろってしまうスーパー・ストアなのだ。

 パイアの町は海沿いにある。バスの停留所のすぐそばにはボールドウィン・ビーチと呼ばれる大きなビーチが広がっており、乗車前にビーチで太陽と波を満喫できる。人々の生活のすぐ横にあるビーチで過ごす時間はこの路線の最大の魅力でもあり、バスの旅のハイライトになるに違いない。

 なお、マウイ・バスを利用する前に頭に入れておきたいのが、島ならではの一本道で起こる、どうにもならない渋滞のこと。住民の通勤ラッシュなどは予想できるものの、予測のつかない事故渋滞や地域の行事による渋滞などは避けられず、バスに遅れが生じることがある。そのため、バスならではの事情を理解した上で、スケジュールを組みたいものだ。また、帰りの時間に余裕をもつことや暗くなる前に帰途につくことなどは、バスでの移動に関わらず、大事なことである。マウイ・バスのウェブサイトでは、車内の様子などが分かる映像を公開するなど、安全対策に力を入れている。


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▽マウイ・バス
http://www.mauicounty.gov/index.aspx?NID=605


今週のハワイ50選
ラハイナ(マウイ島)
カアナパリ(マウイ島)
ハレアカラ(マウイ島)

 

取材:神宮寺 愛