• 体験レポート
  • ライフ&カルチャー
  • マーケットトレンド
  • インタビュー

体験レポート:ハワイを味わう、「マウイ・オニオン」の祭典

世界に知られるハワイの野菜「マウイ・オニオン」の祭典
~旅行先の魅力を味わえる、地産地消のグルメイベント~

110630_hwi_01.jpg  今年で22回目となったマウイ・オニオン・フェスティバルが、マウイ島カアナパリにあるホエラーズ・ビレッジで開催された。毎年5月上旬の週末に開催されるこのイベントは、希少なマウイ・オニオンの認知度が高まるにつれて規模が拡大し、年々盛り上がりをみせている。マウイ島の高原の乾いた土壌と涼しい気候、そして太陽が育むマウイ・オニオンは、まさにマウイ島の魅力を味わえる要素として旅行者にも積極的にすすめたい。とれたての旬の素材をその場で楽しみ、地産地消を体験できるイベントの魅力をレポートする。


終日楽しめる数々のプログラム

110630_hwi_02.jpg マウイ・オニオンが人気のある理由のひとつは、生でも食べられる甘さにある。ハレアカラの裾野、クラ地帯に畑が広がるが、その標高の違いによっても甘みに微妙な差が出るという。これは成長の速度の違いによるもので、標高600メートルの畑では3ヶ月で収穫となるところ、標高900メートルでは5ヶ月ほど要する。時間をかけ、ゆっくり成長したオニオンほど甘みが増すことから、農家ではできるだけ高めの標高に畑を作るなど、土壌作りに余念がない。また、年間を通じて収穫できるよう、努力を重ねている。

 こうした地元の玉ねぎ農家の地道な努力に加え、食材としてマウイ・オニオンを愛する地元レストランのシェフが数々の料理を提案し、さらにマウイ・オニオンの知名度が高まった。今回訪れたマウイ・オニオン・フェスティバルは、この双方の力を存分に感じることができる内容となっており、まさにマウイ・オニオンの魅力を最大限に味わえる祭典といえる。

 入場料が無料である上、会場となるホエラーズ・ビレッジの駐車場も無料とあって、当日は午前中の早い時間から来場者が訪れ、賑わっていた。長年にわたり、同フェスティバルの人気イベントとなっているのが、マウイ島の有名シェフが競い合うマウイ・オニオン・レシピ・コンテストと、子どもから大人まで参加可能のマウイ・オニオン・イーティング・コンテスト(マウイ・オニオン早食い競争)、それに揚げたてアツアツのマウイ・オニオン・リングの販売だ。

 会場にはホエラーズ・ビレッジの既存店はもちろん、それ以外のレストランや農園、食品メーカーなども多数出店しており、さまざまなメニューが味わえる。さらに、タヒチアン&フラのショー、マジックショー、ライブ・ミュージック、マウイのビール会社によるビアガーデンなど、マウイ・オニオンをテーマに1日中楽しめるのが魅力となっている。

 


有名シェフのクッキングを間近に

110630_hwi_03_1.jpg 3つの人気イベントの中でも、特に注目度が高いのが人気レストランのシェフによるレシピ・コンテストだ。世界からの観光客を迎えるハワイで腕を鳴らすシェフのレベルの高さはよく知られているが、ここ数年その注目度がさらに増している。というのも、シェフが地元で生産された食材を吟味して使うだけではなく、農作物の生産にも積極的に関わっているからだ。これにはハワイが太平洋に浮かぶ島々であり、観光客に提供する新鮮な食材を多種多様に得ることが難しかったという背景がある。そこで、豊富な種類の野菜を鮮度の高い状態で手に入れるため、自ら農園運営に乗り出すシェフもいるほどで、それがグルメ関係のメディアでも広く紹介され、新たなムーブメントとなっている。このような料理に使用する食材に深く関わる姿勢が評価されているというわけだ。

110630_hwi_04_1.jpg 今年の参加シェフは、計6名。グルメ誌の読者投票でアメリカズ・トップ・テーブルズに輝いた「ラハイナ・グリル」の元シェフであるデイビッド・ポール・ジョンソン、「サンセイ・シーフード&レストラン」や「D.K.ステーキ・ハウス」など7軒のレストランを経営するデイブ・D.K.・コダマ、マウイ・ニュースでベスト・シェフに選ばれ、「レストラン・パシフィコ」、「イオ・レストラン」などで自らの野菜を振る舞うジェイムス・マクドナルド、「ロイズ」といえば知らない人はいない有名シェフのロイ・ヤマグチ、グルメ雑誌に常に登場する著名なレストラン「カピーシェ」のオーナー・シェフであるブライアン・エスリッジ、近年人気急上昇のレストラン「クアトロ」のエリック・アーボガストと、いずれも豪華な顔触れだ。

 昨年の優勝者はジェイムス・マクドナルド。優勝者のみ次回のコンテストにも出場でき、他の5名は次年度には参加できないので、毎年顔ぶれが変わるのも楽しみのひとつだ。シェフたちはステージではなく、観客席に作られた特設キッチンで制限時間である15分以内に調理し、皿に盛り付け、審査員に運ぶ。人気レストランのシェフたちの手際は、調理作業というよりも、ライブパフォーマンスを観ているよう。巧みな手つきで静かに調理を進めるシェフもいれば、観客やシェフ仲間に話しかけながら、陽気に調理をするシェフもいて、さまざまだ。審査は観客の目の前でおこなわれ、直後に結果発表となる。

 6名のシェフの調理を間近で見ることができ、写真撮影や会話も楽しめるという、グルメ・ファンや食に興味のある人には格好のイベントだ。シェフによっては、コンテスト用のレシピをウェブサイトで公開していたり、レストランでメニューに取り入れているケースもある。今年の優勝者はデイブ・D.K.・コダマで、ケカハ産のエビとロブスターのすり身に、スイスチャードとハマクアコースト産のアリイ・マッシュルームを合わせて揚げ、ロブスターとウニのソースを添えた一品。エビとロブスターのすり身にもマウイ・オニオンが使われている。「マウイ・オニオンは食材として最高だから何もしなくても美味しい」と、笑顔でコメントしていたのが印象的だった。


旅先で食を楽しむ絶好の機会

 マウイ・オニオン・フェスティバルのように、食材をテーマにしたイベントや、エリアを限定しておこなわれる“テイスト・オブ・○○(エリア名)”などのフード・イベントは、旅先で食を楽しむ絶好の機会となる。イベント会場では人気レストランが定番メニューをはじめ、イベントのためのオリジナルメニューを試食程度のボリュームと安い値段で提供することがほとんどだ。また食材メーカーなどがサンプルを配ったりしているので、各ブースをのぞき、試食を楽しむのも一興だろう。

 各レストランの味を試せることは、旅行者にとってはうれしいこと。日程が限られているなか、いくつものレストランの味を1日で効率的に堪能できる。マウイ・オニオンなどハワイ産の食材は、生産量が限られているため多くの量を輸出することができず、検疫の関係で日本に持ち帰ることが難しい。そのため、旅行先で開催されるグルメフェスティバルは、ハワイの自然と風土が作る食材とそれを愛する人々の料理の美味しさと出会う、またとないチャンスとなる。

 ちなみに、マウイ・オニオンは生で美味しく味わえることも特徴のひとつ。フェスティバルでおこなわれているマウイ・オニオン・イーティング・コンテスト(マウイ・オニオン早食い競争)は、1分間でどれだけたくさんのオニオンを生で食べられるかが競争のポイント。大人の部門と子どもの部門があるので、参加するもの旅のよい記念になりそうだ。

 マウイ・オニオンは年間を通じて出荷できるように農家が計画生産をしているが、旬を迎えるのは5月と6月。マウイ・オニオン・フェスティバルは、まさに旬の味を楽しむためのイベントとなっている。

 

今週のハワイ50選
カアナパリ[カアナパリ・ビーチ](マウイ島)
ハレアカラ(マウイ島)
クラ(マウイ島)
ハワイアンフード(全島)

 

取材:神宮寺愛