24時間国際化空港としての課題-本格稼動後の発展に期待 (3/3)

空港へのアクセス拡大も課題多く

101012_haneda_04.jpg 羽田空港をハブ空港として運用していくうえで、国際化とともに24時間化も大きなテーマ。空港とのアクセスを担う公共交通機関も、10月31日からの深夜早朝便スケジュールにあわせてダイヤ改正や増発で対応を見せている。京浜急行は早朝出発便への対応として横浜を朝の5時24分発、羽田空港5時48分着の特急を新設。品川からは5時02分発、羽田空港5時30分着の電車が一番早い。また、東京モノレールは浜松町4時58分発、羽田空港5時11分着を新設するなど、運行時間帯を拡大する。このほか、東京空港交通および京浜急行のバスも運行時間を拡大して利便性を高める。

 しかし、早朝便の出発時間は6時25分から6時55分の間。各鉄道の始発便を利用しても、出発2時間前に到着することは不可能だ。東京空港交通のリムジンバスはダイヤ改正後も朝5時以前に羽田空港に到着する便は予定しておらず、京浜急行のバスは5時前に到着する便を設定するが、出発地は大森駅と蒲田駅に限定される。ただし、全日空(NH)とJLは羽田発着の自社運航便について、国際線の搭乗手続きと手荷物預かりを出発時刻の40分前とする対応を開始する。

101012_haneda_05.jpg 早朝便の出発時間に間にあうとしても、公共交通機関の出発地は主要駅に限られ、自宅あるいは会社から主要駅までの足の確保が必要になる。これは、帰りの深夜便についても同様で、羽田から鉄道やバスで主要駅に到着しても以降の公共交通機関の足は途絶えてしまう。そうなった場合は首都圏の旅行者でさえ、タクシーの利用か近隣のホテルでの前泊/後泊になる可能性が高い。深夜早朝便に焦点をあてると、個人ベースではコスト高になり、デメリットになる可能性もありえるわけだ。

 今後、発着枠が段階的に増え、本格的な24時間国際空港化をめざしていくうえでは、包括的な交通インフラの向上が求められてくる。旅行者の利便性を考えた場合、公共交通機関の運行時間によって発着時間も制限されかねず、24時間運用が無力化してしまう恐れさえある。国内および国際航空ネットワークの拡大とともに、地上交通インフラも含めたグランド・デザインがどこまで描けるか。羽田空港の24時間国際空港化に残された課題は多い。


課題多くも大きい業界の期待

 しかし、課題が多いながらも、羽田の国際化が航空・旅行業界を活性化させる起爆剤になることは確かだ。「成田に加えて、国際線の選択肢が増えることは利用者にとって大きなメリット」と業界関係者は声をそろえる。深夜早朝便はビジネス客だけでなく、新たなレジャーマーケットを生み出す可能性もある。また、成田と羽田両方を利用するフライトの選択、あるいいは両空港を利用した商品造成など、これまでにはなかったビジネスチャンスが生まれてくることも考えられる。「飛びはじめたら、また違った展開が見えてくるかもしれない」。羽田国際化に対する業界の期待は大きい。



取材:山田友樹