旅行販売の新たな潮流-3社の最新動向 (3/3)

3:ツイッター

毎日5万人とのコミュニケーション機会を創出-「楽天トラベル」

101020IT_3.jpg すでに、消費者とのコミュニケーションツールとして、多くの旅行会社が導入しているツイッター。140文字と限られたことばで綴ることから「ミニブログ」ともいわれるこのサービスを、旅行業界で早くから取り入れたのが楽天トラベルだ。同社は2009年8月から開始し、つぶやきを見るフォロワー数は現在、5万人を超えている。ちなみに、楽天トラベルの5人のつぶやき担当者は「つぶやき娯レンジャー」というユニークな名称だ。

 楽天トラベルマーケティング部部長の高野芳行氏によると、日本で広まる前からツイッターを利用していた社員がおり、現場からの提案ではじまった。同社はインターネットでの販売のため顧客と直接の接点が少ないため、ツイッターを利用してその機会を増やし、ブランド認識を高めることを目的としている。

 つぶやきは曜日や時間ごとのテーマをタイムスケジュールで発表。毎日10時には「本日の先だし情報」として、本サイトでの露出よりも早く情報を提供するなど、フォロワーへの特典も設けている。また、つぶやきの運営には楽天トラベル内でレギュレーションを設定しているが、その時期に応じた効果的な案を採用して幅広い活動ができるよう、心がけている。たとえば、羽田空港の新国際線ターミナルが公開された際に、動画サイトのユーストリームを利用して実況中継を行ない、ツイッターでつぶやくという、新しい試みを取り入れた。新企画はミーティングで問題点や課題をあげて改善し、少しずつコミュニケーションの基盤を強固にしている。

 また、自社にマイナスなつぶやきがないか、ウォッチしている。特に、自社のサービスの批判や苦情などのマイナスなコメントには大きな関心が集まる傾向がある。しかし、高野氏は「マイナスの情報にも誠実な対応をすれば、ユーザーに理解していただける」という。これは、ネット用語でいわゆる「炎上」といわれる、マイナス情報の独り歩きを防ぐリスク管理にもなっている。

 ツイッター導入による、販売促進への明確な実績が気になるところだが、現在は5万人のユーザーがフォロー、つまりサービスを認識する機会や評価する人が毎日5万人あり、そらの動きを可視化できるようになった。同社は今後、ユーザーとのコミュニケーションを主眼に運用し、フォロワーを増やすだけでなく、5万人を超えるユーザーの要望を種類別にアカウントを複数化することを考えているという。こうした取り組みで、ユーザーが楽天トラベルに絡みやすいコミュニケーション体制を深めていく考えだ。

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 3社の事例としてOEM提供による販売窓口の拡大、共同購入による消費者の購買喚起、ツイッターによる消費者対応と、それぞれ異なる取り組みを紹介した。ただし、いずれも共通するのは、インターネットがさまざまな場所にリンクを貼ることができ、その情報を自由に往来できる特徴をいかして、他社の力も上手に活用してビジネスを展開している点だ。ITは販売促進、顧客満足度の向上、マーケティングなど、目的や課題解決にあわせ、消費者やBtoBなどパートナーとともに効果的な使い方ができることが、今回の事例からうかがえるだろう。