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「MICEとは?」⑱

市場動向 「MICEとは?」⑱
「MICEサプライヤーのマーケティング(1)」

mice_1702.jpg MICEサプライヤーが何を指し、大変広い仕事=産業にわたっていることは、「MICEとは?②-MICEビジネスは多くの業種、業者から成り立っている」で解説しました。このように多岐にわたり、それぞれのマーケティングを解説することは不可能なため、多くのMICEが実施されているホテル、コンベンション・センター、コンファレンス施設などを中心に共通するマーケティングを、今回は2回にわたり考えていきたいと思います

 

1.MICEサプライヤーはミーティング・プランナーを支援し、そのMICEの目的を理解する必要がある

 MICEとは、1人なり複数の人たちが何かの課題を解決したり、何かの成果を出すために実施します。 

 一言でいえば、そのゴールをサプライヤーも一緒に考える時代となりました。ゴールを明確に理解すれば、最初の段階での提案/企画/見積もりなども、もっと精度の高いものを提供することができます。特に競争が激化している現代では、まずMICE顧客の意図としているMICEのゴール=目的・目標を把握し、充分に理解する必要があります。 

 

2.独自・区別・差別

 激しい競争を勝ち残るキーワードは「独自・区別・差別」。つまり、違いを見せるということに尽きます。 
 「当たり前」「ただやっている」「こんなもので良い」といったプラクティスが通じないのが現代です。莫大な投資をし、ハードウェアだけは市場で優位性があるものを作っても、実際のソフトである「規則」「サービス」「マニュアル」「オペレーション・マニュアル」がフレキシブルでなかったり、あるいは料金に見あったサービスを提供できないのであれば、単なる無用の長物の「箱物」でしかありません。この世の中に存在するすべてのものはコピー可能です。ハードウェアを取っても、その時の切り口で中庸なものができてしまうのは良くありがちなことです。 

 リスク回避をしたためにほんの一瞬しか役に立たないものがそこら中に存在しているのはこのためです。「独自・区別・差別」はハード・ソフト両面を考える未来のキーワードです。

 

3.充分なプランを立てる

mice_1701.jpg MICEに関わるサプライヤーのみならず、多くの企業が行政のように単年主義の予算で執行され、担当者が2年ぐらいで変わっていくことはMICEの開発には向いていません。すべてのMICEが開発・獲得までに何年もかかるわけではありませんが、充分な時間を計画と準備にかけ、中長期的なアクション・プランを策定する必要があるのです。 

 例えば、今月は来月のために動くのではなく、来年の9月のこのMICEビジネスを誘致するために何をするか、再来年の4月のMICEビジネスを取り組むために何をする必要があるのか、といった具合の発想が必要なのです。

 MICEは実は未来に予定が立つビジネスなのです。いい換えれば発想を変えて未来に楽ができるビジネスと考えると、計画そのものもはるかに柔軟性のあるものに変化するはずです。

 

4.全員で取り組むという姿勢
   
 サプライヤーにとってマーケティング、セールス、運営を串刺しにして一番大切な価値観は「全員で取り組む」ということにつきます。

 ホテルを例にとれば、セールス・マーケティング部、宿泊部門、宴会部門、施設部門、総務・人事部門、経理部門などが一体となり、初めてMICE顧客に期待を超えるプロダクトとサービスを提供できることを可能にします。ましてやMICEが大型になればなるほど、それぞれのサプライヤーの代表のみならず、行政の長なども巻き込むことが必要です。グローバル化が進み、競合が世界中に存在する今の時代では必要な「意識」なのです。

 

5.MICEのうち、もっとも得意なセグメントからはじめる

mice_1703.jpg MICEの定義が曖昧なせいか、漠然とMICEビジネスを認識しているサプライヤーが多いことに驚きます。まず、自社のデスティネーションの特性を分析する。アクセシビリティはどうなのかを検証しましょう。

 地方であればその都市への航空機の座席数、空港からの時間、競合都市、自社のキャパシティなどのポジショニングをしっかり明確にする必要があります。 

 地方によっては、MICE=学会・協会と認識しているケースも多く、その土地で最大規模の宿泊施設が200ルームというのに、何千人もの学会のみをターゲットとしている場合も少なくありません。 

 またそのデスティネーションへ運航する航空機の座席数が最大180席であるのならば、明確に180人以下のMICEをターゲットするしかないということに気がつくわけです。 

 イタリアのDMC(デスティネーション・マーケティング・カンパニー)などは、イタリアでは小さなキャパシティがしかない宿泊施設が多いので、インセンティブならば200人くらいがほしいと発信しています。 

 またMICEのセグメントとして、大型コンベンションをねらう、少人数であるけれど滞在が長い医薬品業界の研修をねらう、ネットワーキング・ビジネスのインセンティブをねらうなど、しっかりとセグメンテーションとターゲティングを明確にした方が、効率が良く結果を出す近道なのです。

 

筆者:MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長

【プロフィール】
 

mice_0103.jpg東京生まれ。MICEビジネスのプランナーとして、イタリアへファッション・ビジネスの視察を実施、以後30年に渡り業界の経験を持つ。その後Westin Hotels 極東地区営業支配人、ユナイテッド航空代理店担当課長、法人営業部長、日本地区旅客営業部長を歴任しディストリビューションの整備にも貢献。スターウッドホテルズ日本の依頼により宮崎のシーガイア再生の為にセールスマーケティングの責任者として赴任。海外、国内の数千名規模のMICE獲得とその受け入れに成功し、リゾート再生に貢献した。