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「MICEとは?」⑳

市場動向 「MICEとは?」⑳
「MICEビジネスに必要な3つの要素」

 

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 これまで20回に渡り、わが国でもコンベンションという言葉より発展的な意味で使われ出したMICEというビジネスを体系的に解説してきました。今回は最終回ということで、まとめを兼ねてMICEビジネスに必要な3つの要素を解説したいと思います。

 

 今後発展が期待されるMICEビジネスの開発には、(1)人材 (2)ハード (3)ソフトの3つの要素をバランス良く整備していくことが必要です。


(1)まず1番目の要素は人材です

 MICEビジネスには人材が不可欠です。唯一コピーができない存在である人に重きを置く必要があります。MICEに関わるスタッフのスキル、ナレッジを高める機会を可能な限り取り込むことにより、競合との区別・差別をはかることは、いうまでもありません。実際のハードやサービスのインスペクション、MICE関連の協会等とのネットワーキングの時間、MICE関連のトレードショーへの参加、MICE関連のベニューやデスチネーションの研究などのアクション・プランを策定しましょう。 

 自社や自組織だけではなく、MICEのデザインに必要不可欠なパートナーのサプライヤーとも定期的なミーティングを持ち、リソースなどの確認をするような勉強会なども計画する必要があります。チームで取り組むことの必要性を前回強調しましたが、パートナーがシームレスに機能してこそ、成功するMICEのロードマップが書けるというものです。


(2)2番目の要素はハードです

091014_MC_001.jpg ハードは、デスティネーションにあった仕様を開発の段階から充分なリサーチをして、ターゲットとするMICEセグメントに適合したものを創ることが不可欠です。

 日本国中に散在している無用な箱モノは、この最低限のプロセスを踏んでいないと考えられるモノが多いのです。参加者の動線の問題、参加者が充分にコミュニケーションが取れる場所、搬入物のイン・アウト、充分な会議室、VIPが寛げる場所、バナーを吊すバトンやフックなど、ちょっと気付けば設計の段階から気を配ることができるはずです。

 また、(M)eeting、(I)ncentive、(C)onvention、(E)xhibitionと、それぞれの性格は違いますが、現代では単一で開催されることはほとんど皆無になりつつあります。つまりは色々なMICEの要素が混ざりあって一つのMICEイベントを構成しているのです。

 (E)の展示会を取っても通常、ミーティングやセミナーなどが同時開催されます。これらの要素がないと人が集まらないので、ただ展示する場所といった箱モノでは役に立たなくなりつつあるのです。長時間会議をしていても疲れない椅子などの細部にも気を配る必要があります。


(3)3番目の要素はソフトです

 ソフトといえばコンピューターのソフトを連想しますが、それ以前にポリシー(方針)やレギュレーション(規則)など運営に必要な仕組みを指します。顧客の要望や要求に対し、常に対応はフレキシブルである必要があります。それこそが現代では厳しい競合の世界で勝ち残っていく一番の武器といっても過言ではありません。いくら立派な箱(ハード)があっても、柔軟性のない対応では宝の持ち腐れとなってしまいます。

 特にスピードが要求される現代では、顧客へのレスポンスも即座に答えられる仕組みがグロ-バル・スタンダードとなりつつあります。顧客からの問いあわせに関しても2時間以内に最初のレスポンスをする。24時間以内にはフル・レスポンスをする。そのようなことをウェブ上でコミットをしているサプライヤーも登場してきました。これなどは仕組みづくりをしっかりしておけば、どのサプライヤーでも可能なことと考えます。窓口の一極化(ALL-IN-ONE)の仕組みは特に大切なソフトです。

 また、担当者による能力の差を解消するために、定期的なミーティングの開催やMICEの思想を末端まで浸透させる教育の整備なども考慮にいれる必要があります。MICEフレンドリーなベニューは、ミーティング・プランナーより選択される機会が増えるのです。

 

筆者:MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長

【プロフィール】
 

mice_0103.jpg東京生まれ。MICEビジネスのプランナーとして、イタリアへファッション・ビジネスの視察を実施、以後30年に渡り業界の経験を持つ。その後Westin Hotels 極東地区営業支配人、ユナイテッド航空代理店担当課長、法人営業部長、日本地区旅客営業部長を歴任しディストリビューションの整備にも貢献。スターウッドホテルズ日本の依頼により宮崎のシーガイア再生の為にセールスマーケティングの責任者として赴任。海外、国内の数千名規模のMICE獲得とその受け入れに成功し、リゾート再生に貢献した。