インタビュー：トップツアー旅行営業本部営業推進部長　阿部雅行氏

MICE成功のキーワード（8）
「MICEとは多様化する要望に応えること」

　「東急観光」から「トップツアー」と名称が変わって早2年。以前からMICE事業を得意分野とする企業としてその名を知られていたが、現在もこの分野に強みを持つ。この不景気下にあって顧客拡大を続けていくその強さを、営業推進部長の阿部雅行氏に話を聞いた。

Q．御社にとってMICE事業はどのような位置づけですか

　当社の団体・法人営業では教育旅行、一般／法人旅行、公務―省庁などを中心に事業展開しておりますが、この不景気で金額こそ落ちてはいるものの、MICE関連商品のシェアは確実に増えています。現在MICE事業は当社における業務の“幹”に育ちつつあり、重要な位置づけであるといえるでしょう。

Q．顧客が増えていく理由はなんでしょう

　顧客開発という意味ではMICEを特に意識するものではありません。ご担当者に企画をお持ちし、判断していただくだけです。ただ、当社では顧客の業種ごとに特化したプログラムを構築し、それに沿って営業を展開するようにしています。それが当社の独自性を生み出しているのではないでしょうか。

Q．そのプログラムとはどのようなものですか

　このところ社員旅行でも単なる観光以外の目的を盛り込む傾向にありますが、その内容は業種ごとに特化することができます。たとえば自動車製造業なら、海外のサーキットに興味があるというような感じですね。もちろんそれだけにとどまりませんが、喜ばれる現地アクティビティなどは業種によってある程度特化されてきますので、受け入れ施設も含め、それを体系化するのです。

Q．どのように体系化するのですか

　これまでの顧客の要望や意見をプールしていき、ソリューションを通して有用なものを残していきます。金額ではなくクオリティの高さが顧客獲得、そしてリピーター獲得につながっていきますから、当社でなくてはできない独自性を追求するのです。そのためにはこちらからどんどん提案していくことが大切で、相手の反応やそこで得られた意見も参考に吟味していきます。

　そのためにはまず、営業担当者が顧客の業務内容を熟知することからはじまります。顧客の仕事内容を理解し、綿密なリサーチをしたうえで企画を持っていくため、話題が広がりやすく意見を聞きだしやすいのです。

Q．要望の傾向が変わったといいますが、それはなぜでしょう

　現代では旅行自体が珍しいものではなくなり、社員の方々にとっても“初海外”ではないため、プラスアルファを求めるようになったのではないでしょうか。旅行を通してチームビルディングやボランティア活動をしたりする「アクティビティ」はとても人気があります。

Q．それはこの不景気では単なる慰安旅行を提供できなくなったからでしょうか

　依然として観光だけを目的とした社員旅行を催行する会社も多くあります。そういった団体旅行はMICEとは別物ですが、社員旅行に参加する社員さんたちが“プラスアルファ”を求めているため、おのずと社員旅行の形態が変わってくるのです。旅行に対する見方だけでなく、人の意識も時代とともに変わってきているということではないでしょうか。

Q．MICE事業にも変化が見られますか

　以前はMICEといえば、旅先で行われるさまざまなイベントを指していましたが、経費の削減や新型インフルエンザの影響で「大勢が集まる機会を避けたい」という要望が増えてきたため、変化を余儀なくされています。これをMICEといっていいのかわかりませんが、当社では「集まらずにみんなが楽しめる」ことをコンセプトに企画した「トップセレクション」という商品を提案しています。エステや宿に2名様ご招待、旅先の有名料亭のおせち料理などをカタログの中から好きに選んでいただくというもので、もはや団体旅行ですらありません。ただお客様の要望に応え、かつ喜んでもらえる商品ということで今年はこの商品を集中して提案しています。

Q．旅行会社に発注する業務の域ではないのでは

　旅行でもお客様の要望は多様化しています。MICEもまた、お客様の要望に応えることがその業務内容だと思っています。当社では「要望を上回る“プラスアルファ”をお客様に提供する」ことをモットーとしていますから、さまざまな要望に応えることも業務のひとつだといえるでしょう。

　それに、一応「トップセレクション」の内容は旅行に関連したものになっているんですよ。顧客側には経費削減をしたいという目的があるとはいえ、安さで商品を売っているわけではありません。あくまでも素材が大きな武器であり、旅行会社である当社にしかできないサービスを提供することで、満足していただくように心がけているのです。

ありがとうございました