旅行販売の新たな潮流-3社の最新動向 (1/3)

101020IT_top.jpg オンライン旅行市場ではITを駆使し、従来の旅行業にないユニークな展開がはじまっている。特にこの数年のオンライン旅行サイトのサービス改善や新たなトレンドを巧みに取り入れた販売手法は、既存の旅行ビジネスとはスピード感が違う。オンラインならではの旅行販売に取り組む旅キャピタル、楽天トラベルと旅行販売への展開に意欲を示すグルーポンの3社に聞いた。


>1:OEM提供、他社サイトに販売窓口を拡充
2:グルーポン、口コミ+共同購入で販売効率アップ
3:ツイッター 、毎日5万人とのコミュニケーション機会を創出


1:OEM提供
他社サイトに販売窓口を拡充-旅キャピタル

101020IT_1.jpg 2007年の設立から8月末現在で旅行会社と旅行ポータルの150サイト、旅行業以外の350サイトに航空券や宿泊予約サービスを旅行コンテンツとしてOEM提供し、2011年9月期決算の売上高110億円を見込むまでに成長しているのが旅キャピタルだ。

 OEMとはOriginal Equipment Manufacturerの略で、製品やサービスを提供先のブランド名で生産すること、またはそのような企業のことを指す。旅行業でも従来から、パッケージツアーなどでOEMのビジネスがあった。ただし、旅キャピタルの場合は、自社が運営する国内航空券の「エアーズゲート」「e航空券.com」「旅ツウ」や、海外ホテルの「旅ウェブ」、海外航空券の「CAS Tour」、ハワイ専門「アロハセブン」、インバウンドの宿泊サイト「stayat.jp」などの商材を、提供先サイトのユーザー動向にあわせてカスタマイズし、コンテンツとして提供している。これにより、旅キャピタルとしては提供先の顧客に対して直接の販売窓口を広げることになる。

 同社代表取締役社長の吉村英毅氏は、成長の秘訣を「社内でのシステムとウェブの開発と、クライアントユーザーの利用形態にあわせて作りこんだOEM提供」という。旅行会社には各社が不得意な分野の旅行商材のコンテンツ提供、旅行以外の企業にはサイトのユーザーが望む旅行コンテンツを提供している。たとえば、OEMの提供先である「スカイゲート」は海外旅行に強い。そこに旅キャピタルはOEMで国内航空券と国内旅行を提供する。その際、同サイトは価格に敏感なユーザーの反応が良いので、ボトム価格帯を意識した商品ラインアップを作り上げた。スカイゲートでは学生が帰省に国内航空券を利用する需要があり、提供開始から3年以上で当初の10倍以上の取扱額になったという。

 現在では企業の出張需要に対応し、ポッカコーポレーションや三井生命などのイントラネットにも商品を提供。出張手配では、格安航空券と出張予定の変更にあわせて対応可能な券面を用意する。

 こうしたサービスを提供するにあたり、速いスピードでユーザビリティを改善することは欠かせない。提供先の企業と一緒にユーザーの購買行動や商品提供の導線の改善、提供する商品のラインアップについてブラッシュアップをし、継続的に改良していく。OEM提供先は初期導入や作りこみの費用なしに、小さくビジネスを立ち上げられるうえ、時期や季節によってラインアップを変えることも容易で、利用者を満足させる品ぞろえができる。OEM提供先の商材などで異なるものの、旅キャピタルは売上の一部をレベニューシェアし、OEM提供先の収入増にもつながっている。